「ドコモ、2012年夏にiPhone参入騒動」は意図的リークか?

通常、各企業による公式発表以外の報道は誤報になることもあり、すべてを信頼することはできない。
しかし、何らかの形で意図的に情報をリークするなどして、他社を牽制するために結果的に誤報になったとしても情報をリークすることはあり得る。

2011年12月1日に日経ビジネスオンラインにおいて、2012年にドコモがiPhoneおよびiPadを販売することに合意したとの記事が掲載された。

ドコモ、来年夏にiPhone参入 日経ビジネスオンライン

複数の関係者によると、11月中旬にドコモの山田隆持社長と辻村清行副社長らが訪米し、アップル本社でティム・クックCEO(最高経営責任者)らと会談。次世代iPhoneと次世代iPadの販売で基本合意し、販売数量などの条件について本格的な交渉を開始した。
アップルはドコモにiPhoneやiPadの販売権を与える条件として、ドコモが昨年12月に商用化したLTEネットワーク(サービス名は「Xi(クロッシィ)」)に対応させることを要求し、ドコモがこれに応じたもようだ。

この情報はどこからのどんな意図の物か
この記事は日経ビジネスの取材による物だが、ドコモもしくはアップルの内部関係者しか知らないような情報から記事にしたようだ。日経ビジネスと言えば、日本でも一流の報道機関であり、全く何もないところからの情報ではないだろう。
しかし、アップル自体はこの手の情報統制に内部でも厳しく、日本のアップル関係者は一般的に直近にならないと情報を知らされていないようだ。そうなると、米国のアップル関係者から得た情報とも考えられるが、国内取材が中心の日経ビジネスが、米国のアップル関係者からここまで情報を引き出したとは考えにくい。製造業者からの情報もあり得るが、ハードウェアの情報は得られても、通信業者に関する情報は知らされないのが一般的だろう。残るのは、ドコモの関係者だが、アップルや他社からの情報入手が困難なことを考えるとドコモ自身からの情報と考えるのが妥当だろう。

ドコモは、純増数などでソフトバンクに差をつけられ、2011年10月のiPhone 4S発売以降、auとも差をつけられるようになっている。MVNOによる乗り換えも多くなっていると考えられるが、ドコモの公式な情報ではこの影響は、Android端末の発売が12月などになったことの影響が大きいと考えられている。
しかし、実際の販売状況をよく知るドコモ自身が、現行のAndroid端末ではiPhone 4Sに勝てる見込みがないことから、情報をリークするという形で他社の勢いを削ごうとしたと考えることもできる。もちろん、これらの情報が誰がどういった形でこの記事を書いた記者に提供されたのかは、記者自身にしか知るよしがないし、その意図も情報をリークした物しか知らない。

現在、スマートフォンを買おうかどうか考えている方の中には、ドコモでiPhoneが使えるようになるならそれまでまとうという方も少なくないだろう。また、より高速な通信速度で使えるとされているLTE対応の新機種が来年出るなら、ドコモかどうかはともかく現行機種を買うのを考える方も少なくないだろう。

そもそも、この報道にあるようにLTE対応のiPhoneやiPadはあるのか
iPhoneなどのLTE対応はQualcommなどの通信チップ開発状況から予想すると、2012年中頃以降になると思われる。これらのチップが2012年の次世代iPhoneや次世代iPadに搭載されたとしてもおかしくはない。
Appleとしても、日本でLTEの投資では先行するドコモを利用することで、iPhoneの使い勝手をより向上させるのは悪くない選択肢となる。

一方、ドコモはこの手の情報における教科書的な回答をしている。

弊社に関する一部報道について ドコモのお知らせ

現時点において、「iPhone」及び「iPad」の取り扱いについて、当社がアップル社と基本合意したという事実はございません。
また、現時点において、「iPhone」及び「iPad」の取り扱いに関し、アップル社と具体的な交渉をしている事実もございません。

消費者はどうすればいいか
これらの情報がどこからのどんな意図だったのかを検証することは難しいが、要するに企業同士の情報合戦であり、消費者がこれらの情報に惑わされ何らかの行動をするべきではない。
情報機器は各社ある程度計画的に開発、販売されるが、計画がうまくいかないこともあるし、Appleの場合は中途半端な製品を販売することもしない。そのため、実際に1年後にどんな製品が出てくるのか、もしくは出てこないかはApple自身も正確なことを言えるわけではない。
消費者としては、現時点で提供されている物が、自分が必要とする物が価値のある物かどうかで判断するのが正しいと言える。

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