2009年にサービス開始したWiMAXは無線LAN(Wi-Fi)の延長上にある無線通信規格だ。
一方、NTTドコモがXi(クロッシィ)という名称で2010年末頃にサービス開始を目指し、各携帯キャリアも2011年頃から参入する予定のLTEは、携帯電話で使われている無線通信規格の延長とも言える規格だ。
WiMAX機能を内蔵したパソコンなどが登場することで、気になり始めるのがLTEとWiMAXのどちらが主流となるかという点。WiMAX機能内蔵パソコンを買っても、LTEが主流になってしまってはWiMAX機能が無駄になるというような感覚なのだろう。
データ通信に使う場合、電波がつながることの次に重要になってくるのは通信速度。
WiMAXの通信速度は速いとは言われていても、下り16Mbps程度の速度しか現時点で出ていない。
今後これが高速化したとしても、現行の規格上の最大値は40Mbpsなので、2倍になるのも難しい。
一方、LTEは下りで100Mbpsを目指しており、これが規格値だとしても、現行のWiMAXの規格値くらいは実質速度として出る可能性がある。
速度だけ考えると、LTEの方が有力だが、各機器で使える利便性を考えるとWiMAXの方が上だろう。
WiMAXはCPUなど半導体最大手のインテルがプッシュしている規格であり、全世界でサービスが始まろうとしている。インテルがプッシュしていることもあり、様々なPCにWiMAXモジュールが標準で載ろうとしている。
また、2012年開始予定のWiMAX 2は330Mbpsなので、これが開始されればまた状況も変化する。もちろんWiMAX 2は対応機器が必要になるが、この速度が出れば、一般的な利用には十分すぎるし、ユーザーが増えて大量に使われた場合でも、帯域制限などが必要ないくらいかもしれない。
LTEは規格と同じように、携帯電話の延長的なサービスで提供されるだろうが、WiMAXはPC以外の機器にも柔軟に対応していくようだ。
たとえば、携帯ゲーム機などに内蔵することで、ゲームをWi-Fiなどの設定することなく簡単にダウンロード可能に。PNDと言われる小型のカーナビ(GPS機能付の高性能端末)に内蔵することで、常に最新データを入手するといった使われ方。
当然ながら、LTEもこれらのサービスに対応可能だろうが、携帯電話の延長でサービスする場合、契約などの問題がある。AmazonのKindleはこれをうまく活用できているが、Kindleで使う帯域は非常に小さく、それが無視できるからだろう。
これをゲームやPNDなどに拡大した場合、携帯電話系でそこまで踏み込めるのか。その点、Wi-Fiの延長サービスで、UQコミュニケーションズのサービス体系にもあるように、1人で複数の機器を契約しても追加料金は1台あたり月に200円だけだ。
今後、スマートフォンやパソコン、その他機器など、1人で複数のデータ通信が可能な機器を持ち運ぶ場合、UQのように複数の機器を契約しても、コスト負担が少ないサービスを選ぶことになるだろう。もちろんLTEのサービスがどうなるかまだ決まっておらず、UQに近い価格体系になるのかもしれない。
いずれにせよWiMAX、LTE共に、それぞれの利点を生かしたサービスを展開していくことになるだろう。
それらが本格化するのが、LTEのサービスが開始し、エリアが本格的に広がる2012年頃になるだろう。それまでにWiMAXは海外での展開も本格的に始まり、日本でもエリアをさらに増やし、さらに高速になるWiMAX 2が開始する。
LTEは携帯電話系の既存施設やサービスをさらに強化した物なので、既存の設備を活用し、一気に攻勢を仕掛けるかもしれない。
その数年後には、どちらかが主流になっているのかもしれないが、それも2014年など当面先の話だ。
LTEが普及するかもしれないからと、WiMAXの導入を躊躇っている方がいるとしたら、それは現時点では無駄な心配だと言える。
そもそもWiMAXは機器購入コストはともかく、契約時に2年縛りなどがないので、いつでも解約可能だし、コストをかけずに契約自体を維持することも可能だ。
2010年10月
WiMAX 2などに関して加筆修正
コメント
参考になりました。
最後の方の文面で「踏襲」ではなく、「躊躇う(ためらう)」という意味ではありませんかね。