AmazonがKindleで狙うのは何か?

Amazon.com Kindle

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AmazonのKindleは正式には販売台数を発表していないが、既に数十万台を販売し、2009年10月の決算発表でもKindleが好調なことを公表している。

Kindleは当初、電子書籍を読むためのデバイスの名称であったが、このままだと、Kindleという名称はAmazonが提供する、電子書籍関連のサービスを表す名称になるかもしれない。
実際、Kindle for PCというKindleの電子書籍をPCの画面上で見るソフトが2009年11月に提供されるし、iPhone用のアプリも用意されている。このように、Amazonで購入した電子書籍は、iPhoneやPCなどデータを表示するデバイスなら、ほとんどの物で表示できるようになるだろう。

AppleのiTunesがCDをリッピングし、そのデータをPCやiPodなどで再生するのが当たり前になり、曲自体もデジタルデータとしてオンラインで購入できるようになると、米国のCDショップが壊滅状態になった。
これと同じように、Kindleのようなサービスが普及することで、書籍を紙で読むのではなく、デジタルの書籍データを何らかのデバイスで表示するというのが一般的になるかもしれない。その場合、書籍関連業界が一変してしまう可能性もある。

既に日本など先進国では、書籍販売のかなりのシェアをAmazonが握っているが、Kindleというサービス以外に有力な物が出てこなければ、将来の電子書籍販売をAmazonがかなりのシェアを持つことになるだろう。

従来は執筆者が書いた文字を、編集、印刷、製本していたのが出版社で、それを販売していたのが書店だった。
Amazonはその書店の部分だったが、電子書籍は印刷や製本が不要になるので、出版に関するほとんどの部分をAmazonが担ってしまえる。

出版で重用なのは執筆者が何を書くかという点だが、それをコントロールするのが編集者の役目となる。
従来の出版は、印刷などのコストがかかり、ある程度売れる本を出さなければ出版社自体のビジネスに影響が出た。そのため、編集者がある程度コントロールしていた部分もあったが、電子書籍の場合、出版に原価はほとんどかからない。
こうなると、従来の自費出版もコストをかけずに行うことが出来るようになる。
実際、Amazon自身もDigital Text PlatformというKindle用の自費出版サービスのような物を開始している。

読みやすい書籍にするため、新しいテーマの発見などには編集者の力も必要だが、従来の紙の出版よりも編集者の力は必要としなくなるだろうから、著者が書きたいことを書いて、そのままKindle用に自動でフォーマットを整えれば、少部数でも売れるというシステムが構築できる。
もちろん、従来の出版社のように、実力のある執筆者が書いた物を優秀な編集者がし、売れる物にする形式自体は残るだろう。

Kindleがこのまま好調なら、このあたりの流れを全てAmazonが行うことになる可能性がある。
そうなると書店だけではなく、出版業界がAmazonに飲み込まれてしまうことになる。

もちろん、この動きに対抗するように、米国の大手書店Barnes & Nobleがnookというデバイスを発表したし、米国ではソニーもこの市場に参入している。

活字離れが叫ばれて久しいが、ラジオやテレビがなかった頃に比べれば、文字を読むという手段以外に様々なメディアが登場しているので、活字を読まなくなるのは当然だ。
しかし、文字を読むという行為以上に効率的な情報入手手段が出てこない限り、これが無くなることはない。

AmazonがKindleで狙うのは、単に電子書籍デバイスや、デジタルデータの販売だけではなく、もっと巨大な市場なのかもしれない。

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