何のために電子書籍を「自炊」 するのか

ScanSnapに代表されるオートシートフィーダ付きスキャナなど、関連機器の利便性が向上したことで、製本された本(単行本、文庫本、漫画など)や雑誌などの印刷物をナイフなどで解体し、スキャナーでスキャンし電子データとして保管しやすくなった。

電子データといっても、基本的に紙に印刷されている文字や画像などをページ丸ごと画像として保存しているだけだが、透明OCRにより文字を検索することも可能になっている。

2010年現在、まだ数が少ない物の、純粋な電子書籍も入手可能になっている。数は少ないながらも電子版を購入できるのに、わざわざ自分の蔵書を傷つけてまで電子化する理由がわからない方もいるようだ。

一般に「自炊」と言えば、自宅で料理を作ることだが、紙に印刷され製本された本を解体し、自分で電子書籍化することも一部で「自炊」と呼ばれている。

この、電子書籍の自炊は、ページ数や製本された状態、使用機器にもよるが、慣れてていても1冊あたり10分前後かかる。製本された本をナイフなどを使い解体してしまうので、元の状態には戻らない。
本好きの方の多くは、本を傷つけることに罪悪感があるようだ。わざわざ電子書籍を「自炊」する方のほとんどは、本を製本された状態で物理的に保管しておきたいのではなく、書かれている内容を読むために「自炊」している。多くの方は罪悪感よりも利便性を選んでいるわけだ。

現在、紙の書籍は文庫本なら500円前後から、新書や単行本は1,000円程度から3,000円程度で販売されている。電子版があったとしても、iPadでしか読めないなど自由度が低く、紙版の7割程度の価格で販売されお得なわけでもない。その電子版も紙版の発行から遅れていることも少なくない。

「自炊」した場合、PDFなど一般的なフォーマットで保管するため、Kindleの様な電子書籍に特化したリーダー、iPadや各種スマートフォン、パソコンなどあらゆる電子デバイスで表示できる。
かかるコストは、時間や機器のコストを入れても1冊あたり100円前後がいいところだ。もしも、文庫本などで販売されている小説が、各種端末で表示できるKindle版として200円で販売されるなら、わざわざ「自炊」する意味が無くなるが、現在はどの電子書籍も1,000円近いため、コスト面でも「自炊」は有利となる。

また、最大の問題は、本を良く読む方に特有の問題として保管にかかるコストだ。
大抵の読書家は、図書館などで借りることもあるだろうが、本を購入し続けるので、それを保存する必要があり、本棚が必要になる。しかし、初めは余裕でもしばらくすれば本棚には入らなくなり、段ボール箱に入れて押し入れに入れたり、倉庫に入れるようになる。
収納場所が限界に達すると古本屋に売るなど、処分することになるが、電子化すれば、データ容量が大きくなる雑誌でも、1冊あたり100MB前後で収めることが可能なので、2TBのHDDが1万円を切る現在、無限に近い蔵書を電子版として保管できる。

iPodの普及により、CDをリッピングし、数百、数千曲を持ち歩くことも珍しくなくなったが、これと同じように電子版なら数百、数千冊の蔵書を持ち歩くことも可能だ。

まとめると

  • そもそも、電子版が普及していない
  • 電子版があっても価格が高く、自由度が低い
  • 本の置き場を気にしないでもいい
  • 何冊でも持ち歩ける

というような理由から電子版を「自炊」する方が増えている。
わざわざ製本された本を解体し「自炊」してまで、いつでも好きな本を読みたい方と、本棚や段ボール箱に保管しておきたい方のどちらが本好きと言えるだろうか。

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