電子書籍の普及で作家以外に必要になるのは

ここ数年、書籍が売れていません。
一部のミリオンセラー、ベストセラーはありますが、出版点数自体は増えても、全体的な部数は減少傾向にあります。
雑誌も同じで、一般的に商業雑誌は広告収入が無ければ成り立ちませんが、その広告も状況は芳しくありません。紙に印刷する書籍や雑誌の状況はかなり悪いと言えるでしょう。

これによって、文学などを志す方にとっては、各社が主催する文学賞に応募、賞を取ってデビューという流れに乗ろうと思っても、賞を取ったところで売れないのですから、デビューしても経済的な利点は少なくなります。

また、すでにデビューしている方にとって、書籍以外に文章を発表する場として雑誌などがあります。その雑誌も部数が減り、広告収入が減っているのでコストを下げる必要があります。
そのためには、クオリティを維持するために原稿料自体は下げなくとも、ページ数を減らすなどして掲載する量を減らすような努力をしなければなりません。
これによって、文章を発表する場が減り、文学を志したとしても収入がついてこないので、それを目指そうという人が減るという状況になります。

これによって人気の作家など、文革自体が一部の方に固定化され、新人などが育たず、将来の日本文学が衰退する可能性があります。
唯一、これが解消できる可能性にあるのは、電子ブックなど、紙に印刷しない電子書籍です。
電子書籍は、紙に印刷しなくなり、物流なども不要になるため従来の本を大幅に割り引いた金額で販売出来るようになります。

また、書籍など文章で利益を得るためには、出版などの高いハードルが必要でしたが、このハードルはほとんど無くなります。
紙に印刷する必要がなくなるので、出版社などに頼ることなく、ネット上で勝手に配布すればいいだけです。

もちろん、これでは利益を得るのが難しいので、何らかの形で販売するシステムが必要になりますが、Amazonなどが用意するプラットフォーム(Amazon DTPなど)を利用することで、少額の手数料を払うだけで販売自体は可能です。

将来は、このようなプラットフォームを活用し、多くの作家が文章を販売するようになるでしょう。そうすると発生する問題が、多すぎてどれを読んだらいいかわからないという点です。
その点では、紙に印刷された本などは、自分の好みは別にして、ある程度のクオリティチェックを受けた上で販売されているので、品質ではある程度満足できます。
しかし、これからは、出版社などのフィルターが減るため、質が保たれているかどうかわからないものが増えるでしょう。
おそらく、今まで編集者が介入し、よりクオリティを上げた物を出版していた筆者は、今までと同じように編集者の力を必要にするでしょう。しかし、編集者自体の知り合いがいない、予算がもったいないなどの理由で、筆者が一人ですべて行う物もあるでしょう。それでも、クオリティが保たれていればいいのですが、読みづらい作品になってしまうこともあります。
そんな書籍を見つけて、編集し、よりよくして売り上げを伸ばすというようなビジネスが出てくるかもしれません。

また、出版自体のハードルは無くなり、売れればある程度稼げますが、認知を増やすための広告など、売るための努力が必要になります。
大手出版社が介入した書籍の場合、資本を利用した広告などで認知を増やせますが、個人の場合そう簡単にはできません。

本当は読めばおもしろい物なのに、全体の量が多いが故に、それを知られることなく埋もれてしまう可能性が今まで以上に増えます。
そのために、書店や書評などによるおすすめがこれまで以上に重要になってくるでしょう。

ポイント
電子書籍で、出版のハードルが下がり、誰でも出版して販売できるようになる。
編集者の介入によりより、クオリティを上げる取り組みも必要になるだろう。
紙よりも出版点数が増えるので、おもしろい本を紹介する目利きが今まで以上に重要になる。

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