Adobe Creative Cloudでソフトウェアの価格はどうなるのか

ソフトウェアの価格は年々下降傾向にある。iPhoneやAndroidなどスマートフォン向けのソフトは100円前後の物も珍しくないし、無料の物もたくさんある。
オープンソースなど元々無料で公開されている物もあれば、有料の物もあり、ソフトウェアの価値は価格だけでは単純に説明できないのが現状だ。

無料のソフトウェアの開発者はどうやって生活しているのかという話はともかく、ユーザーに販売して利益を出していた有料のソフトの価格低下や、サブスクリプションなど月額課金などの新しい方式がどうなっていくのかが課題になっている。

高価なソフトの代表が、AdobeのPhotoShopなどとなるだろう。映像や建築の設計に使うようなソフトは昔から非常に高価で10万円や100万円など、ハードウェアが何台も購入できるような価格設定になっていて、価格が高いこともあり違法コピーされることも多かった。

Adobe Creative Cloud
そんなAdobeがAdobe Creative Cloudという新しいソフトウェアの販売方式を取り入れるという。

これは、Adobeが提供するクラウドサービスやトレーニングなどの使用権も含め、最新のソフトウェアを月額課金で使用できるようにする物だという。

価格は月額5,000円(税抜き予定価格)で、年間税込みで63,000円となる。
従来の形式でもソフトウェアは販売されるが、数十万円になる高価なソフトウェアパッケージでの販売は縮小し、月額課金(サブスクリプション型)に移行することになるだろう。

ここで気になるのが、年間6万円という料金だ。
今となってはソフトウェアで6万円というのは非常に高く感じるが、Adobeの従来型製品と比較すると絶妙な価格設定となる。

Adobe製品は高価で、すべてのクリエイティブ製品がセットになったMaster Collectionは税抜き379,000円(CS5)となっている。これに、1年半から2年程度でのメジャーアップグレードがあり、アップグレードの価格が税込み152,000円(CS4からCS5.5)となっている。
CS5からCS5.5のマイナーアップグレードもあり、このときの価格は91,000円(税抜き)だった。

このように常に最新版にするには数年おきに10万円近い出費が必要になる。古いバージョンが使えなくなるわけでもないが、数世代古くなるとアップグレードも不可能になるため、最大3世代おきにアップグレードが必須になっていた。今回のAdobe Creative Cloud登場により、このアップデートポリシーも変更になり、アップグレードが1世代前までになる。

仮に、40万円でソフトを購入し1年半おきに15万円のアップグレード料金を払い2回メジャーアップグレードをすると、70万円の出費となる。3年間でさらに1年半使用したとして4年半のソフトウェア代金が70万円かかった計算ができる。
これが月5千円(税抜き)になった場合は、年間6万円なので合計27万円となる。さらに長く使用すればトータルコストは増えるが、全体として安くなることが多いだろう。

安くなったように見えるが、AdobeユーザーはAdobeのすべての製品を使いたいわけではなく、DTP目的の方はInDesignを中心に、写真処理が目的の方はPhotoShopと、目的別に使いたいソフトが異なる。
PhotoShopだけならExtended版でも134,000円、アップグレード価格は46,000円。2回アップデートしても27万円にはならない。

つまり、特定のソフトしか使用しないなら、月5,000円の料金は割高になる場合があると言うことだ。ユーザーの使用方法は様々で、月5,000円でお得になる場合もあるだろうが、損をする場合もある。その場合はパッケージを購入しろというのだろうが、パッケージ版の価格が従来と同等の場合、似たような機能のある他のソフトに移行しかねない。

Adobe Creative Cloudは2011年10月に発表され、11月に価格体系などが発表されたばかりだが、今後のユーザーの動向によっては、価格やサービス、パッケージ版の価格なども変化が必要になってくるだろう。

同様に高価なパッケージ版のソフトウェアをビジネスにしているところは、Adobeと同様に変化が求められている。

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