水曜日, 10月 4, 2023
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スーパーコンピューターとは

理化学研究所が予定しているスーパーコンピューター、「汎用京速計算機」に採用されるCPUが、富士通のSPARC64 VIIIfx。 これは45nmで製造され、8コア、128GFlopsという性能をもった高速なCPUとなっている。 京速計算機は国産を目指しているが、SPARC64 VIIIfxは富士通が製造する日本製のCPUとなりそうだが、そもそもSPARCは日本が独自に開発した物ではない。 SPARC自体はアメリカのサン・マイクロシステムズが1985年に開発した物で、その後富士通などがライセンス提供をうけて製造。さらに、1999年には富士通とサン・マイクロシステムによる共同開発が発表された。 もともとあったアメリカ製のSPARCをベースに、アメリカのHAL Computer Systemsと富士通がSAPRC64を開発。さらにHPC用に拡張した物が、2009年に登場したSPARC 64 VIIIfxということになる。 現在、主に使われているCPUをアーキテクチャ毎に並べると ほとんど全てのパソコンやサーバーで使われているインテルのx86系 携帯電話など組み込み機器に採用されているARMのARM系 ゲーム機などに採用され、東芝、IBMやソニーなどが開発したCellにも使われる、IBMのPOWER系 それに加えて上記SPARC系 さらに、組み込み系ではルネサステクノロジ(日立)のSuperH系、MIPSなどもある。 というような状況になっている。 スーパーコンピューターなどのHPCに多数採用されていたり、ほとんど全てのパソコンに採用されているのはx86系。 HPCなどにはPOWER系も使われているし、ゲーム機や組み込み用機器にはARM系も多い。 おそらく世界中のCPUシェアのかなりの部分は、この3つのアーキテクチャに集約されていると思ってもいいくらいだ。 そのなかで、SPARC系の位置づけはどうなのだろうか? CPUは今後ますます開発コストがかかるようになり、パソコン用でも開発費だけで数百億円以上が必要になる。そんななかで、「売れない」CPUを開発しても元を取るのは難しい。 それを採用する方としても、シェアの少ないアーキテクチャ用にOSやソフトを改良したり、それに不可欠な各種ハードウェアを開発する費用も馬鹿には出来ない。 スーパーコンピューターなどの特殊な分野でも、売れるx86系を拡張したようなCPUが主流になる中、それに特化したCPUの今後はどうなってしまうのだろうか。 当然ながら、CPUの種類が将来にわたって、この数種類に固定されたわけではない。しかし、CPUとそれを取り巻く周辺の環境を考えると、シェアの低いCPUが生き残っていくのは簡単ではない。 SPARC64 VIIIfx Extensions PDF SPARC64 VIIIfx Extensions 日本語版 SPARC64 VIIIfx Fujitsu's New Generation Octo Core Processor for PETA Scale computing 富士通 HPC カタログ
スーパーコンピューターの話題で、スカラー型かベクトル型かという議論があります。そもそもこのスカラーとかベクトルとは何でしょうか? ものすごくわかりやすくすると、スカラー型は汎用的なパソコン。ベクトル型は専用の演算機というような感じです。 ベクトル型の方が演算が高速に出来るが、スカラー型は汎用品で速度はそこそこでコストが安いみたいな特徴があります。 もう少し詳しく書くと、ベクトル演算というのがありますが、これはスーパーコンピューターで行うような気象予測などの科学技術演算で多用する演算です。 専用のベクトル演算装置のあるスーパーコンピューターの方が、圧倒的に速いということになります。 しかし、スーパーコンピューターの世界ではベクトル型はほとんど使われていません。ほとんどのCPUがインテルやAMD製を採用したスカラー型となっています。 ベクトル型の技術を持っているのは日本のNECなどですが、スーパーコンピューターの採用例が少ないため、技術があってもあまり売れないというような状態です。 そんな中、NECがインテルと協業し、ベクトル型のハードやソフトに関する共同開発することが発表されました。 将来(2011年頃)登場予定のインテルのサーバー用プロセッサXeonにIntel AVX(Advanced Vector eXtentions)というベクトル演算機能が追加されます。 CPU開発の規模はますます巨大化し多くの投資が必要になります。技術があっても売れないのでは、開発に見合った回収が見込めません。 特にスーパーコンピューターのような単価が高くて数も出ない物では、開発に失敗しては会社自体の存続にも関わります。 そんな中、世界最大の半導体企業で、CPUのシェアも高いインテルが、今後さらに強化したいHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)の分野で、ベクトル型の技術のあるNECと組むというのは両社の利点を生かした選択であるといえるでしょう。 これによって、NECの技術が取り入れられる将来登場するXeonを使ったスーパーコンピューターは、スカラー型でありながらベクトルの機能も持った物となることが予想されます。 1980年代はCPUの種類でRISCかCISCかという議論がありましたが今ではほとんど語られることがありません。これはCISCがRISCの機能を取り入れるなどしたことが影響しています。 これと同じように、スカラー型とベクトル型の違いについても、将来は語られることはなくなることが予想されます。
スーパーコンピューターという用語を良く耳にしますが、普通のパソコンと何が違うのでしょうか? 名前にあるようにスーパーなコンピューターだとはわかりますが、どの程度スーパーなのでしょうか? 理化学研究所が2006年頃から計画し、2012年の完成を目指している次世代スーパーコンピューターの通称京速計算機があります。 これは10ペタフロップスの演算性能を目指しています。10ペタフロップスとは、1秒間に1京回、10の16乗、要するに1秒間に10,000,000,000,000,000回計算できることになります。 この速度がどのくらい速いかわかりませんので、最近のパソコンと比べてみましょう。 例えば、普通のパソコンに使われているような、インテル Core 2 Duo 2.6GHz程度のCPUの演算性能は15ギガフロップス程度です。 これは15,000,000,000回計算できることになるので、上の10ペタで割り算してみると666,666倍(約67万倍)速いと言うことがわかります。 最近はグリッドコンピューティングなどで、複数のパソコンで分散して計算するということが行われています。 例えば、タンパク質の解析をするFolding@homeや、地球外生命体を探すSETI@homeがあります。 これらのプロジェクトは、世界中の家庭にあるパソコンを使って分散して計算を行うので、高価なスーパーコンピューターを必要とせず、大規模な演算が可能となります。 このプロジェクトのように普通のパソコンをつなげてしまえば、スーパーコンピュータが作れてしまうような気もします。 実際、世界のスーパーコンピューターのトップ500位に入る中で、インテルやAMDなどのその辺で売っているCPUを採用した物は80%を越えています。 ということは、個人でも予算さえ何とかなればスーパーコンピューターが作れてしまうのではないでしょうか? パソコンが1台5万円として、67万台購入するのにかかる費用は333億円です。 京速計算機の総予算が1,000億円を越えるようなので、単純に比較は出来ませんが、予算だけで見ると1/3以下となります。 しかし、パソコンを購入し、LANなどで接続しても、スーパーコンピューターのような性能は出せません。 スーパーコンピューターがハードウェア的にすごいのは、高速なCPUに加えて、各CPUなどを接続するインターフェースに高速な物を採用しているという点です。 インターコネクトなどと言われていますが、一般的なパソコンに使われている物より高速な通信が出来る物を採用しています。 これによって、各CPU間のデータ移動が高速になり、スーパーコンピューターとしてのハードウェア的な性能が発揮できるようになります。 これは普通のパソコンをLANなどで接続しただけでは不可能です。 パソコンも部品交換、ソフト改良などで速くすることが出来ますが、スーパーコンピューターも同じです。 例えば、2009年現在、スーパーコンピューターでトップ1位と2位を争っているのは、アメリカのRoadrunnerとJaguarですが、11月にJaguarがRoadrunnerを抜いて1位になりました。 Jaguarは1.75ペタフロップスの性能で、1.04ペタフロップスのRoadrunnerを大きく引き離しています。 これらのランキングは500位まで公開されている、TOP500というサイトで確認できます。 TOP500