デジタルファイルから音楽鑑賞する時代の基礎

従来の音楽鑑賞と言えば、レコードやCDなどの音源が入ったメディアをプレイヤーで再生させるというのが一般的だった。
これらの方法は今後もなくなることはないだろうが、大量のCDなどのメディアを保有している場合、メディアの入れ替え作業は非常に面倒な物となる。

そのため、多くの音楽ファンはCDをコンピューターなどに取り込み、その取り込んだ音楽データをアンプなどに送り再生すると言うことをやっている。
これによって、CDなどを出したり入れたりすることがなくなり、いつでも自分の音楽ライブラリから好きな音楽を簡単に再生することができるようになる。

ここで重要なのは、CDをどうやってコンピューターなどに取り込むか、取り込んだ音楽をどうやって再生するかという点である。
CDをコンピューターに取り込むのに普及しているのが、AppleのiTunesなどで取り込むという方法だ。iTunesで取り込めば、よほどマイナーなCDでもなければ、CDの情報から曲情報をインターネット経由で取り込み、曲名なども自動付加される。また、取り込んだ音楽ファイルをプレイリストなどを使用し、自分好みの曲を集めたりすることも可能となる。

このiTunesを使った取り込み方法の場合、CDの取り込みと再生は比較的簡単にできるが、アンプなどを接続して再生する場合の自由度があまり高くない。また、CDを取り込む形式もiTunesが対応している形式に限られる。

取り込んだCDをアンプなどを経由して再生する
音楽ファンは自分の好みのアンプやスピーカーを通して音楽を再生したいだろうが、AppleのiTunesを使った場合、使用しているパソコンを通さないと事実上音楽の再生ができない。
これは便利な点もあり、iTunesを入れたパソコン、Apple TV、AVアンプなどを接続すれば音楽リストなども含め簡単に参照できるが、Apple製品に縛られることになるし、常にコンピューターが必須となる。
コンピューターを必須としない場合、iPodに音楽を入れて、iPodを直接アンプなどに接続して再生するという方法もある。これなら再生時にコンピューターを必須としないが、Apple製品に縛られることになる。

CDを取り込む形式
CDをコンピューターに取り込む場合、mp3やAACなどの圧縮した形式で取り込むのが一般的だった。しかし、コンピューターのHDDなどが大容量化した今、音質が低下する圧縮形式で取り込むのはおすすめできない。
たとえば、1TBのHDDにはCDと同じ形式で保存したとして、1曲5分の場合おおよそ2万曲収納できる。128kbpsのmp3やAACなら、20万曲ほどになるだろう。音楽を数百万曲単位で持っている方はほとんどおらず、多くても数万曲になるだろうから、わざわざ圧縮して保存する必要は無くなった。
しかし、CDと同じ形式のWAVなどで保存した場合、WAV自体は音のデータしか入らないためコンピューターで扱うには利便性が悪い。mp3やAACなどの場合、1つのファイルに音のデータや曲の名前や作曲者の情報(タグ)などを付加できる。このような情報が付加できる方が、ファイルを扱う上で利便性が高まる。
WAVで保存した場合にもCUEという付加情報を別途保管するという方法もあるが、利便性を考えると、付加情報も記録でき、音自体もCDと変わらない可逆圧縮のフォーマットで保存した方がいいだろう。

可逆圧縮とは、データを圧縮して小さくした後、元のデータに戻せる圧縮方法だ。ロスなく圧縮し元にもどせるのでロスレス(Lossless)などとも呼ばれる。
mp3やAACの場合、不可逆圧縮という人間の耳では判読できないレベルで音のデータ自体を間引いて圧縮するため、完全に元も形に戻すことはできない。
不可逆圧縮の場合、データを間引いてしまうので元のデータに比較するとかなり小さくなるが、可逆圧縮(ロスレス)の場合、元に戻せるためそれほどデータは小さくできない。データの内容にもよるが、一般的に元のデータの半分程度になる。

この可逆圧縮(ロスレス)には2つの主流となるフォーマットがある。
1つはAppleのLosslessという形式で、もう1つがFLAC(Free Lossless Audio Codec:フラック)という当初からフリーで開発された形式だ。
FLACは当初からフリーで開発されたこともあり、対応プレーヤーなどが多く可逆圧縮(ロスレス)の標準と言われることもあったが、最も普及している音楽プレーヤーのiPodがFLACに対応していないことからそれも完全ではなかった。
2011年10月になるとその状況が変わる事態が発生し、当初公開されていなかったApple Losslessがオープンソースとなり公開されることになった。

Apple Lossless Audio Codec

Apple Losslessに正式対応した製品はApple製品だけだったが、今後、各種機器がこのApple Losslessに対応するようになれば、音楽用可逆圧縮(ロスレス)フォーマットの事実上の標準がApple Losslessになることも考えられる。

タイトルとURLをコピーしました