AmazonにとってKindleというデバイスは重用ではない理由

AmazonはKindleというデバイスとKindle Storeというコンテンツ販売サイトの販売、サービスを2007年に開始した。
販売数を公表していないのであまり話題にならなかったが、2009年にはAmazonの数ある商品の中でもトップの人気商品となった。
Kindleは無料のネット接続も駆使し、今までどこも成功しなかった電子書籍で成功しようとしている。

これに追従するように、以前からこの市場に参入しているソニー、最近参入したBarnes & Nobleなどが積極的な動きを示しているが、将来の電子書籍市場はどうなるのだろうか?

文字を読むという行為において、紙に印刷された物が最も読みやすいが、Kindleなどが使用している電子ペーパーは消費電力で紙に近いという利点はある物の、書き換え速度などにおいて液晶などに劣っている。
将来はカラー化など含め機能が向上する見込みだが、電子書籍を読むための端末は今のところ未成熟であると言える。

現在、電子書籍を読むには、Kindleなどの専用デバイス、PCやスマートフォンなど汎用的なデバイスのどちらかがある。読みやすさの点では軽く、バッテリ駆動時間も長いKindleに分があるが、電子書籍は紙の書籍のように、決まったデバイスで読まなければならないわけではない。

表示デバイスはコンテンツを表示する物であり、重用なのはそのコンテンツだ。その上で、それを表示するのに最適なデバイスは何かという事になる。
最適なデバイスは時と場合によって異なり、見やすいディスプレイのPCが設置された机の上ではPCになるだろうし、リビングのテレビの前にいればテレビがそうなるかもしれない。
従来の書籍は、紙に印刷された物を持ち歩く必要があったが、電子書籍ではそれを表示できるデバイスの前にいればそこで表示できる。

Amazonにとっても、Kindleという専用デバイスは電子書籍を普及させるための足がかりであって、Amazonが開発したKindle自体はそれほど重用ではない。
Kindleというデバイスは、以前、iPodの普及が始まった頃に、白いヘッドフォンコードが目立っていたのと同じ理屈で、それをユーザーが使用すればするほど広告効果は高まり、普及を手助けするが、この専用端末自体は重用ではない。

Amazonにとって、重用なのはKindle Storeで販売するコンテンツ自体にある。
電子ペーパーの開発を様々なメーカーが進めており、将来確実に待ち受けているのは、表示デバイスの性能と価格の競争だ。Amazonにとってみると、そのリスクを背負うよりも、コンテンツ販売での手数料収入を得る方が利益は大きいだろう。

事実、Kindle for iPhone、Kindle for PCに加えて、Kindle for Mac、Kindle for BlackBerryの登場も近く、この戦略に向かって着実に進んでいる。
現在は、電子書籍という分野が未成熟なため、Amazon自身がそこそこ読みやすい電子書籍リーダーを開発し販売する必要があるが、将来はデバイスメーカーが開発した端末向けに、Kindleを読めるようにし、コンテンツの販売に特化していくだろう。

そのためには、現在の電子書籍市場でAppleのiTunes Storeのようにトップになる必要がある。

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